家庭教師に関連する法律と行政処分
悪質な事業者から消費者を守るために様々な法律があります。このページでは、 家庭教師に関連する法律(特定商取引法・景品表示法・消費者契約法・割賦販売法)の規制内容や違反事例と、それらの法律に違反して行政処分を受けた家庭教師会社とその違反内容・処分内容を紹介しています。
家庭教師に関連する法律
特定商取引法
「特定商取引法」は、事業者からの悪質な勧誘等から消費者を守る法律です。昔は「訪問販売法」という名前の法律でした。
特定商取引法の対象となる商取引には、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供などがあります。
「特定継続的役務提供」とは、長期間のサービスに対して高額な対価を支払う消費者トラブルがおきやすい商取引です。
「家庭教師」の契約で2ヶ月・5万円を超える契約は「エステ」「美容医療」「結婚相手紹介サービス」「語学教室」「学習塾」「パソコン教室」などと共に「特定継続的役務提供」に指定されています。
特定継続的役務提供に対する規制の内容は消費者庁の特定商取引法ガイドにてご確認ください。
クーリングオフ・中途解約金の上限・禁止事項などについての説明が記載されています。
家庭教師の場合、契約書を交わす前に「概要書面」を消費者に渡すことを義務付けていますが、「概要書面」に記載すべき内容の一覧についても記載されています。
「特定商取引法」に違反行為があった場合は、消費者契約法・民法によらずとも契約の取消しが可能となっています。
又、2004年11月の法改正以降は、「特定商取引法」に罰則が設定されており、省庁・都道府県などの自治体により「業務改善命令」「業務停止命令」などが発動されることもあります。
「業務改善命令」「業務停止命令」などの発動の基準は公開されていませんが、消費者の窓口である「消費生活センター」などの機関に寄せられた相談件数などが基準となっているといわれています。
「特定商取引法」の罰則規定が設定された2004年11月法改正以降に、数社の家庭教師業者が「業務改善命令」等の行政処分を受けていますが、殆どが高額教材の抱き合わせ販売を行っている会社に対する処分となっています。
景品表示法
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は事業者による虚偽や誇張した広告を禁止し、消費者を守る法律です。
以前は公正取引委員会の管轄でしたが、2009年9月以降は消費者庁の管轄となっています。最近、「景品表示法」に対する違反行為について、行政が力を入れて監視していると言われています。
年間数十万円の教材を販売しているにも関わらず、「<高額>教材販売は行っていません」とHPに記載している場合は、景品表示法違反に該当します。
又、(様々な名目で)入会時に数万円の料金がかかるにも関わらず、「入会金はありません」などの文言をHPに記載することも、景品表示法違反になる可能性があります。
このような行為を見つけた場合は、お近くの消費生活センターに相談されるとよいでしょう。
2023年10月からはステルスマーケティングも景品表示法違反となりました。一時期、家庭教師会社がホームページ制作会社やマーケティング会社に「嘘のランキングサイト」や「偽の比較サイト」を作らせて
自社を1位表示して自社に誘導する広告宣伝手法?が流行っていましたが、景表法の改正により、これらの「嘘のランキングサイト」や「偽の比較サイト」を発注した家庭教師会社は景品表示法違反となります。
ちなみに、こちらのページに10年ほど前まで存在していた家庭教師各社が作成していたステマサイト
(「嘘のランキングサイト」や「偽の比較サイト」)の一覧が載っていますが、現在はすべてのサイトが閉じられているか、ドメインを購入した他の事業者により
別のステマサイトに変わっています。家庭教師会社によるステルスマーケティングがなくなったわけではなく、
最近は分かりやすい(=法律の規制を受けやすい)ステマサイトではなく、より巧妙なステマサイト(ランキングサイト・おすすめ○○選など)が主流になっています。
消費者契約法・割賦販売法
「消費者契約法」は、業者とのトラブルなどから消費者を守ることに主眼をおいた法律です。「割賦販売法」は「教材のローン」「授業料」などをクレジット契約した場合などに適用されます。 「家庭教師をやめたのに教材のローンだけが残った」などの場合は、「割賦販売法」に基づく抗弁権の接続を主張してクレジット会社への支払いが停止できる場合があります。 お近くの消費生活センターに相談しましょう。(参考:東京都のHP・東京くらしWEB)
法律の規制を逃れる悪質業者のテクニック
法律の規制を逃れるため、悪質な家庭教師会社は様々なテクニック使ってきます。以下はその一例です。
クーリングオフ妨害
特定商取引法では、「法律で定められた事項が書かれた書面(法定書面)を受け取った日(契約した日ではありません)から8日以内であればクーリング・オフが可能である」と決められています。 しかし、一部の家庭教師会社の場合、契約成立後に家庭教師会社による「教師探し」が始まります。その為、先生が来た時には「クーリングオフ期間が終わっている」というケースが少なくありません。 中には故意に「先生決定」をクーリングオフ期間後にしている家庭教師会社もあるようです。以下は当サイトの掲示板にお寄せ頂いた「クーリングオフ妨害」に関する投稿です。
(掲示板の投稿より)
契約後、子供の能力を見るためにと問題のコピーを渡され、一週間以内に郵送で送り返してくれと言う。
その後、子供にあった先生を紹介すると言われ待っていたら、こちらの希望の曜日も時間もまったく無視されて先生を紹介された。
その時点で契約から10日経っていてクーリングオフの期間も過ぎている。解約するなら解約料が必要とのこと。その為の時間稼ぎだったのかと疑いたくなるようでした。
契約期間を2ヶ月以内・自動更新にする
特定商取引法では、「2月を超えるもの」「5万円を超えるもの」が規制の対象となっています。 悪質な家庭教師会社の中には、特商法の対象とならないように、「契約期間を2ヶ月・自動更新」としている会社が存在します。ご注意ください。 以下は当サイトの掲示板にお寄せ頂いた「クーリングオフ妨害」に関する投稿です。
(掲示板の投稿より)
解約したいと申し出たら、「2ヶ月の契約なので解除もクーリングオフもできません」と断られました。
態度も一変しまして「早く入金しろ」の一点張りです。2ヶ月の契約などした覚えはないのですが・・・。
消費者センターに相談したら、家庭教師の契約は、2ヶ月を超えない場合には解除も、クーリングオフもできないらしいのです。
2ヶ月以上の明細の話をしましたが、法律上黒ではないようです。法律のグレーゾーンを使った酷い営業方法です。皆さんも注意してください。
家庭教師関連の行政処分例
以下は、過去20年間で特定商取引法や景品表示法などの違反行為で行政処分を受けた家庭教師会社・屋号・違反内容・処分内容です。
最近は「景品表示法違反」での行政処分が頻発しています。10年ほど前までは家庭教師業界自体がホームページなどで嘘の表記をするのが当然・
本当のことを記載したら(他社比較で)勝負にならないなどの状況が当たり前となっていましたので、家庭教師業界の多くの会社がいつ行政処分を受けてもおかしくない状況でした。
消費者庁が景表法違反での行政処分を連発したため、ここ数年間で多くの家庭教師会社がホームページから嘘の表記を取り除きました。
それまでは料金表の備考欄に「上記以外には費用はかかりませんという嘘の表記をしていた会社」や
「一部の料金だけを記載して全てであるかのように誤認識させていた会社」が、料金自体を非公開にしたり、料金体系を変更したりしました。
その結果、家庭教師会社の大半が「料金非公開」という塾業界と同じ状況になっています。
前述の通り、家庭教師会社の多くが何らかの景品表示法違反行為をしているのが当たり前の状態でしたので、行政処分を受けた会社は氷山の一角にすぎません。
もちろん、「景表法違反」は法令違反ですので、コンプライアンス重視が当たり前となってきている昨今、許されることではないのですが、
ここ数年で「景表法違反の行政処分」を受けた会社だけが悪い問題ではなく、業界の大半が何らかの景表法違反をしていたことをご理解頂ければと思います。
「景表法違反での行政処分」も「特定商取引法違反での行政処分」も同じ行政処分ですので、同レベルの悪質度のように感じがちですが実際の悪質度はかなり違います。
同じ行政処分でも「景表法違反での行政処分」よりも、「特定商取引法違反での行政処分」の方が悪質度がかなり高いです。
実際、高額教材の販売などで「特定商取引法違反での行政処分」を受けた会社の多くは「業務停止命令」という重い処分を受けています。
下記をお読み頂くと、どのような場合に「行政処分の対象」となるかがお分かりいただけます。
ご自身が「被害に遭ったかも」と思われた場合は以下の内容を参考にして頂いて、同様の事例があった場合は泣き寝入りせずに消費生活センターに相談しましょう。
↑最寄りの消費生活センターが案内されます↑
特定商取引法違反などでの家庭教師会社への行政処分(過去20年間)
アルファコーポレーション(家庭教師のアルファ)に指示処分(2018年)
違反内容:概要書面及び契約書面の交付義務違反(記載不備)
違反内容:午後11時以降まで3時間を超える勧誘を行っていた迷惑勧誘
根拠法:特定商取引法
詳細:消費者庁HP
修学館(家庭教師の修学館)に勧告・6か月間の業務停止命令(2010年)
違反内容:特定商取引法では勧誘に先だって目的を消費者に告げなければならないとしているが、教材販売が主な目的であるにも関わらず、電話勧誘の際に「無料体験はいかがですか」などのみ告げて、教材販売が目的であることを先だって告げていなかった特定商取引法違反(勧誘目的等不明示)
違反内容:家庭教師派遣の契約に伴って教材の売買契約が必要であるにも関わらず、消費者が契約の意思表示をするまで、教材の数量や総額を告げていなかった特定商取引法違反(重要事項不告知)
根拠法:特定商取引法
学習院(家庭教師の寺子屋・関西学習院)に6か月間の業務停止命令(2009年)
違反内容:チラシには「教材費ナシ」「1コマ2000円」と記載していたが、実際は家庭教師派遣契約時に教材の契約を行っていた特定商取引法違反(膨大広告)・景品表示法違反(有利誤認)
違反内容:無料体験授業を実施した後、教材の勧誘を行う際に、実際は不確かなものであるにも関わらず「100%成績を上げることができる」「必ず結果はでます」と告げていた特定商取引法違反(不実告知)
根拠法:特定商取引法
ウィル(家庭教師のフレンズ)に3か月間の業務停止命令(2008年)
違反内容:特定商取引法では、勧誘に先だって目的を消費者に告げなければならないとしているが、電話勧誘の際、教材販売が主目的であることを告げなかった特定商取引法違反(勧誘目的不明示)
違反内容:特定商取引法では、勧誘に先だって販売業者名を消費者に告げなければならないとしているが、「家庭教師のフレンズ」等の屋号のみしか告げなかった特定商取引法違反(氏名不明示)
違反内容:電話勧誘をするに際し「静大2年生です」と事実でない学歴などを告げた特定商取引法違反(不実告知)
根拠法:特定商取引法
ウィンジーエックス(家庭教師のウィン)に業務改善指示(2008年)
違反内容:概要書面の記載不備・契約書面の記載不備・関連商品販売契約の解除によって生じる債務の履行拒否又は不当遅延などの特定商取引法違反
根拠法:特定商取引法
インヴィーオに勧告・3か月間の業務停止命令(2007年)
違反内容:特定商取引法では勧誘に先だって目的を消費者に告げなければならないとしているが、主目的である「教材販売」の目的を隠して「月1万円程度で家庭教師はいかがですか、無料体験できます」と電話勧誘するなど特定商取引法違反(勧誘目的等不明示)
根拠法:特定商取引法
詳細:愛知県HP
景品表示法違反などでの家庭教師会社への行政処分(過去20年間)
バンザン(オンラインプロ教師のメガスタ)に措置命令と6346万円の課徴金納付命令(2023年)
違反内容:客観的根拠がないのに「オンライン家庭教師で利用者満足度第1位」などとHPに表示した景品表示法違反(有利誤認・優良誤認及)
根拠法:景品表示法
詳細1:消費者庁HP
詳細2:消費者庁HP
ワン・ツー・ワン(家庭教師のノーバス)に措置命令(2020年)
違反内容:「登録教師数」「第一志望校合格率」「顧客満足度」「派遣スピード」「中止料なし」の表記の内容が景品表示法違反(優良誤認・有利誤認)
根拠法:景品表示法
詳細:埼玉県HP
シニア(家庭教師のシニア)に措置命令(2014年)
違反内容:「指導料」以外に一切費用がかからないとHPに記載していたが実際は21000円の「入会金」が必要だった景品表示法違反
根拠法:景品表示法
家庭教師会社(ペーパーカンパニーで実際は別会社が運営)に警告(2011年)
違反内容:「入会金ゼロ」をうたいながら実際は入会時に別名目「登録料」を徴収していた景品表示法違反(有利誤認)
根拠法:景品表示法
詳細:日経新聞HP
トライグループ(家庭教師のトライ)に勧告(2006年)
違反内容:「3月31日までは何度でも無料で授業を受けられる」と記載したチラシを配布していたが、実際には、体験授業を受けるには「教務費」「登録費」など最大約4万円を払う必要があったなど景品表示法違反(有利誤認)
根拠法:景品表示法
詳細:J-CASTニュース
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